断捨離の是非を問う その3 コレクターの極意

「店長、49800円貸してください。」

E藤さんが、新しいなーんにも無い部屋に住み始めて

約3ケ月が経ちました。

すでにごみ屋敷一歩手前まで進化した部屋で

ダニ攻撃を受け、瀕死の彼女が出した答えは

断捨離のDVDを購入することでした。

E藤:「店長、この片付けの達人のDVDを見れば

   1ケ月で部屋が綺麗になって、

   心も体も軽くなるんです。

   ダイエットにも効果があるんです。」

いや、絶対にならないだろ。

絶対にやせないだろ。

だいたい、怪しいダイエットいろいろしてるじゃないか。

E藤:「床に物を置けば置くほど、運気も下がって

    あっ、特に金運が下がるんですって。

    いやー、金運上がって宝くじとか6億当たっちゃったらどうしましょう。

    とりあえず、貯金ですかねー。

    投資にもまわさないとですよねー。」

一体、何の話をしているのだろう。

JJ:「床に物を置かなきゃいんでしょ。

   断捨離のやり方、知ってるじゃない。

   それは、どこで知ったのさ?」

E藤:「達人のYOUTUBEです。」

JJ:「じゃ、YOUTUBE見ればいいんじゃないの?」

E藤:「ダメなんです!YOUTUBEで見れるのは

    ほんの、初心者向けの動画なんです。

    さわりなんです。

    それじゃ、浅いんです!

    リバウンドするんです!」

JJ:「リバウンド?」

E藤:「そうです。一時的に部屋が綺麗になっても

    また、すぐに汚くなるんです。

    DVDで深ーく考え方まで学ばないと

    綺麗な部屋と痩せたボディはキープできないんです!」

JJ:「深い考え方って何よ?」

E藤:「この達人は、心理学とかにも詳しくて

    何冊も本書いてるんですよ。

    ほら、見てくださいよ!」   

と言って、E藤さんはAmazonの書籍を私に見せました。

なるほど、クチコミレビューも高評価です。

JJ:「こんなに、いっぱい本かいてるんだったら、

   この本買えば?

   えーっと、関連書籍合わせても、10冊くらいだよね。

   全部買っても、49800円にはならないよ。

   全部、読めばこの達人の奥深い断捨離の極意が解るんじゃないの?

   DVDより、もっと、深いことが学べるんじゃない?

   E藤さん、文学部出身だし、本読むの好きでしょ。

   ほら、3冊まとめてカートに入れれば、今なら5パーセントオフだよ。

   合計5870円、安いじゃん!

   ポイントもつくし、私なら絶対こっちにするね。」

E藤:「うーん。」

JJ:「それ、全部読んでダメなら、

   DVD買うお金、貸すよ。」

E藤:「わかりました。

    店長の言う事にも一理あります。

    まず、本買います。」

と言って、Amazonのおすすめ書籍3冊をすぐにカートに入れて

買ってしまいました。

2日後、店にE藤さんの注文した達人の書籍が届いていました。

夜中にもかかわらず、E藤さんは受け取り店到着メールを見て

すぐに取りに来ました。

E藤:「店長、これで人生が変わるんです!

    新しい人生、素敵!

    おやすみなさい!」

と喜んで帰ってゆきました。

その日から1週間ほど経ち、E藤さんに会っても、

相変わらず、私のあげたノベルティのエコバッグを持っているので、

JJ:「かばん、まだ、復活しないの?  

   達人の極意は少し身についてきた?」

と問いかけると、

E藤:「はい、私には断捨離は一生、無理だとわかりました。

   達人とは、生まれつき、DNAが違うんです。

   もう、いいんです、今の人生で幸せなんです。

   ダイエットも、ドレッシングのせいか、

   このごろ、おなかがすくと胃がカーッとしだしたんで止めました。

   ぽっちゃり女子の方がもてるって雑誌に書いてありました。」

ふーん。

とりあえず、DVDは買わないんだ。

断捨離っていいものなんですかね。

よく、雑誌に有名人とかインフルエンサーがほとんど何もない部屋で、

きれーいなお洒落な部屋でお茶飲んだりしてる写真とか

掲載されていますが、私は一度も

うらやましいと思ったことがありません。

私は、コレクターです。

好きなものに、囲まれた生活が好きなのです。

以前にも書きましたが、本やコミック・CD、洋服よりもバッグと靴と帽子が好きです。

いろんなものを集めています。捨てられません。

美術館グッズ、ブライス、チーキー・パンキー、ピンズ、

JOJOグッズ、PEANUTS、香水瓶、白いハンカチ、帽子箱、

バンダナ、くまグッズ、シルバニアファミリー、

可愛いお菓子の包み紙、箱、缶、文房具は言うまでもないです。

可愛い包装紙は文庫本のカバーにします。

縁起の良いお祝いでもらった包装紙などは、見るたびに

いただいた時の喜びのエネルギーがよみがえります。

可愛い缶は裁縫グッズをいれます。

お菓子の可愛い形や美味しさが思い出され、

おなかいっぱい、幸せな気分になります。

可愛い缶は集めているアクセサリー、シールなんでも入れます。

昔、祖母が観音開きの物入れの中に、

年季の入った一部錆びた缶や箱にいろいろなものを入れて

いくつも重ねて収納していました。

昔は、今のように物が世の中にあふれていなくて、

なんでも、捨てずにリサイクル・リユースして使っていました。

また、空き箱などの用途を考えたり、

色紙やシールを貼ったりしてリメイクするのが

とても楽しかったです。今でもですが。

雑誌の素敵な写真の切り抜きをためておいて

シールのようにコラージュしてオリジナルな箱を作ることが、

世界で1つだけの宝物を作る過程にワクワクしていました。

洋服も、高校生のときに買ってもらったものをつい最近まで着ていました。

高価で上質な洋服は、更年期でサイズアップして着れなくなっても、

捨てられなくて、分解し、パッチワークのようにはぎ合わせて生地にして

新しい形の洋服に生まれ変わらせています。

好きな柄は変わらないので若いころと同じように

一緒にお出掛けできます。

ワンピースやスカートなど、広い面積のアイテムは

五十肩で上がらなくなった肩に優しい、

幅広のショルダーベルトにアレンジしたバッグになります。

裏地も、お気に入りだったワンピースなので、

バッグを開けるたびにときめきます。

昭和生まれで、特に幼稚園、小学校と軍隊のような学園に通っていたので、

鉛筆などは、彫刻刀で削り、ながーい鉛筆キャップをつけて、

3センチくらいになるまで使っていました。

まだ長い鉛筆を教室のごみ箱に捨てたりすると、先生にものすごーく怒られました。

コロナ禍が始まったころに、

物を持たない暮らしをしている方が

店頭からトイレットペーパーなどの日用雑貨や食料品などが消え、

大変な思いをしたと言っていました。

私も、ティッシュペーパーとトイレットペーパーを送りました。

以前、断捨離にはまって、たくさん物を捨てたことを自慢していた知人が

昔に買ったブランドの高価なバッグや洋服を、もう手に入らなくなったのを知り、

とても、後悔していました。

この年になると、一通りの流行を経験してきているので、

”あ、また流行してるんだ”

と思うファッションが多々あります。

以前の流行とは少しずつ違うようですが、

メゾンによっては、まったく同じデザインが復活していることもあり、

むかーしのお洋服でも案外、合わせ方によっては上手く着れます。

わたしは、なんでもかんでも捨てるのは個人的には疑問に感じます。

好きなものに囲まれて、心がほわっとする瞬間が一日の中で少しでもあることが

わたしには、とても大切な時だからです。

好きなものは好きなのです。

好きなものは変わらないし、いつでも、こころがときめきます。

古くてもときめくものは宝物なんです。

今年3月にコロナに罹患したときに、家族から隔離されて

和室で一人で寝ていました。

畳に布団を敷いて寝ていたのですが、体の左側の壁には、

本棚があります。

いつでも、手に取って読める比較的、

新しく買ったお気に入りの本を置いている本棚です。

”いま、地震がきたら、多分、この大量の本の下敷きになるだろう”

と本棚を見て思いながら毎日寝ていました。

寝ながら、本の背表紙を見るだけで内容を思い出したり、

起きだして、手に取ってパラパラめくったり、

気が付くと、枕元に本が積みあがっていました。

”好きな本に囲まれて死ぬならそれでもいいや”

そう思いました。

本を捨てようとは思いませんでした。

部屋や家にごみを溜めて衛生的に問題があり、周囲に迷惑をかける事は

ダメだと思いますが、好きなものをきちんと自分で把握できる

状態であれば、物に囲まれる生活でもいいと思うのです。 

多分、命尽きるときまでコレクターです。

断捨離、まだ、流行してます?  

物を自分の家から廃棄したら、外に出したら

しあわせになれるんでしょうか。

その廃棄した”ごみ”という名前に変わった

もともとは、気に入って購入した宝ものたちは灰と煙になるか、

別の場所に移動するだけで、

リサイクルして新しい人に使ってもらえることは

良きとしても、

地球が抱える根本的な問題の解決になっていないような気がするのです。

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