E藤さんは、部屋を借りて一人暮らしを始めました。
E藤:「いやー、何にもない部屋っていいですよねー。」
JJ:「引っ越し終わったの?
何にもないって部屋に何があるの?」
E藤:「なんにもないです。」
JJ:「どうやって寝てるの?」
E藤:「駅前のホームセンターで寝袋買いました。
床、フローリングで、ちょっと背中痛いけど、
毎日、キャンプみたいで楽しいです。
エアコンあるんで、寒くないです。」
ふーん。
JJ:「ごはんとかどうしてるの?」
E藤:「新しい部屋の1階がコンビニなんでお腹すいたら買ってきてます。
ちょー便利です。引っ越してよかったです。
この前もお風呂入ってるときに、シャンプー無くなって
仕方ないから、バスタオル体まいてー
頭あわあわなんで頭には
サランラップ巻いてシャンプー買ってきましたー。
ほんとーに便利です。」
はあ?コンビニの上に住んでて違うコンビニに働きに来てるってなんだよ?
そんな恰好でコンビニ行くな。
E藤:「店長、家具、ぜーんぶ新しくしようと思ってるんですけど、
どんな感じの部屋がいいですかねー。」
JJ:「その前に実家の部屋の荷物はどうなったのさ?」
E藤:「それは、言わないでください。
もう、忘れてたのに、思い出すと気分悪くなるじゃないですか!」
何、私、間違ってること言ったかな。
そう言って、バックルームでインテリアの本や家具の通販の本を
読み漁っていました。
JJ:「これだけは言っとくけど、
前の部屋の荷物を整理して掃除しないと、
新しい部屋も同じように散らかって寝る場所が無くなるよ。」
その会話から、およそ、2ケ月後、ときは盛夏、E藤さんは制服の下に、
長袖のTシャツを着るようになりました。
夏の暑い時期で制服は半袖になり、衛生上の理由で半袖制服の下に
長い袖のシャツを着ることは禁止されています。
同じシフトに入っているクルーさんから、
「E藤さんが体をぼりぼり掻いていていて、気持ち悪いので
店長、聞いてください。」
と報告が入りました。
その日は、私は夜シフトでしたが、早くに店に行き、
E藤さんと会って長袖シャツの理由を聞きました。
すると、
E藤:「店長、私、小さいころ、2段ベッドに憧れてたんです。
通販で新しい部屋に背の高ーいベッドを買ったんです。
ベッドの下が、勉強机と収納になってて、
ワンルームにちょうどいいかなって、
そしたら、子供用だったみたいで、
ベッドに座ると、天井の照明に頭が当たって
毎日、頭を打つんです。」
だから?
もともとE藤さんはちょっと世間の常識から外れた思考の持ち主でしたが、
そろそろ、私では手に負えなくなってきたのかも知れないと思いました。
JJ:「からだ、痒いの?」
E藤:「店長、段ボール、店のごみ庫に捨てていいですか?」
会話がまったくかみ合わない。
JJ:「なんの段ボールよ?」
E藤:「引っ越しして、新しく家具をいっぱい買ったんですけど、
節約のために、通販で組み立て家具ばっかり買ったら、
段ボールがいっぱいになって、
今、部屋の天井まで段ボールが積み重なってるんです。」
それで?
E藤:「段ボールとか、パッキンとかごみとか捨てるの面倒でそのまま置いてたら、
ダニとか虫が繁殖したみたいで少し前から、
体いっぱい刺されて痒くて
腕も赤く腫れて長袖を。」
JJ:「皮膚科に行きなさいよ。」
E藤:「でも、なんか恥ずかしくて行けなくて。」
JJ:「この暑い時期に長袖着て、ぼりぼり体掻いてる方が
恥ずかしいと思うけどね。」
JJ:「だいたい、車、持ってないのに部屋からここまでどうやって
大量の段ボールを運ぶのさ?」
E藤:「タクシーで。」
JJ:「はあ?何往復するつもりなの?
段ボールをタクシーで捨てに行ってる人って聞いたことないけどねー。」
JJ:「虫とかダニが大量にわいた段ボールをタクシーで運んで
タクシーにダニとか移って繁殖したら大迷惑だよねー。」
バカなのか?
JJ:「不燃物の日に早起きして出しなさいよ。
生ごみも貯めてるの?」
E藤:「生ごみは、少しずつ階下のコンビニに捨てに行ってます。」
ああ、うちのコンビニの上がマンションじゃなくてよかったー。
JJ:「コンビニも迷惑だよ、きちんと、ごみステーションにだしなさいよ。」
E藤:「ちょっと、遠くて。」
JJ:「とにかく、まず、ごみと段ボールを片付けないと
病気になるよ。
もう一部屋借りなきゃいけなくなるよ。」
E藤:「そうなんです、また、ちょっと部屋が狭くなってきて。」
JJ:「部屋は狭くならないよ、片付けてないだけだよ。」
E藤:「部屋でスムーズに動けなくなってきて。」
JJ:「だから、片付けようよ、掃除機も買わなきゃ、
ダニとかコロコロじゃ取れないよ。」
E藤:「強粘着タイプ買ったんですけど。」
JJ:「ムリ!」
25歳独身、自由を謳歌している一人暮らし女子。
断捨離の必要性を感じるまであとわずか。