JJでございます。
梅雨が明けて、暑さが加速している毎日です。
夏になると、コンビニでは冷たい飲み物やスイーツ、
ざるそばやそうめんなどの売れ行きが良くなります。
気温を予測して季節商品を多めに仕入れるのですが、
完売になってしまい、お客様からお叱りをうけることもしばしば。
体を動かす事業所や工場の多い立地だったので、
アイスクリームやかき氷などは、レジかごに2杯くらい、
一度に購入されるグループもいらっしゃって、
アイスケースの中のかごをレジに持ってこられて、
ご丁寧に、
「アイス全部無くなったよ。」
とか
「下の段にも無いんだけど、在庫出して。」
とか、毎日のように言われておりました。
少し大きめのサイズのゼリーも、のど越しがよいのか売れ始めます。
たらみのゼリーは、だいたい、小さいサイズのスイーツ用スプーンではなく、
「こんな小さいスプーンでちまちま食べてたら日が暮れるで!」と
カレーライスやピラフ用の大きなスプーンを所望されます。
7月になって、夕夜間にゼリーを毎日、
2~3個買ってくださるお客様が現れました。
40代後半くらいの男性で、柔らかいニットやポロシャツを着用されており、
身なりも好感がもてる感じで
いつもにこやかに笑っていてとても感じの良い方でした。
ゼリーはスイーツのコーナーの並びにあるので、
いつも、スイーツを見ている女性に話しかけて談笑したりしていました。
話し方も穏やかで偉そうな感じもなくゆっくりとお買い物をされていました。
トライチ着用人口密度が高い当店では目立っており、紳士的な感じがして
クルーさんの間でも、
「あの人、感じいい人ですね。礼儀正しいし、
ああいうお客さんが増えてほしいな。」
と”ゼリーの紳士”と評判になっていました。
7月下旬のある日のことです。
当店前の国道を少し南方向に下ったところに、ニュータウンがありました。
その近くのスーパーマーケットの駐車場で50代の女性が暴漢に襲われて、
持っていたバッグを奪われて怪我をしたと、夕刻のニュースで流れてきました。
事件発生場所が近くで、犯人がまだ、捕まっていないとのことで、
当店前の国道も、夜中じゅう、パトカーがひっきりなしに通り、騒然としていました。
事件の翌日、夕刻に当店の駐車場にパトカー2台と覆面パトカー1台が停まりました。
いろいろと問題の多い当店ですが、
今日は、店内は特に問題なく穏やかだったので、
”一体、何事?”
「店長、万引き?」
「店長、なんか警察いっぱいきたで。なになに?」
と私たちも、お客様もざわつきました。
私服警官2人が入店し、
「店長さん、いますか?」
と言うので、私が対応いたしました。
店外では、制服を着た警官が何人もうろうろしていて
”何が起こったのか?”
怖くなりました。
バックルームに私服警官を通し話を聞きました。
警官:「昨日、この近くのスーパーで女性が襲われた事件知ってますか?」
JJ:「はい、まだ犯人が捕まっていないというニュースを見ました。」
警官:「防犯カメラを追って犯人を先ほど、逮捕しました。」
JJ:「そうなんですか、良かったです。」
良かったー!もう捕まったんだ。
ん?だから?捕まったんだよね。なんでうちに警察がたくさん来てるの?
JJ:「それで、うちになにかご用でもおありなんですか?」
警官:「この男性が容疑者なんですけど、見覚えありますか?」
と言って、携帯の画面を見せられました。
そこに映っていたのは、毎日ゼリーを買いに来る感じの良いお客様でした。
ゼリーの紳士!!!!!
JJ:「こ、この頃、よくご来店いただいている方です。」
えーっーーーーーーーーーーーーー!
この人が強盗犯?
警官:「女性を殴ってから奪ったハンドバッグを現金やカードを抜いた後、
この店に捨てたと証言しているので、
調べさせていただきたいのですが。
午前中にこちらの店のごみ箱に捨てたと言ってるんですが、
まだ、ごみありますかね。」
JJ:「午前中であれば、まだ、裏のごみ庫の中にあるはずですが。」
私はごみ庫の鍵を持って警官を引き連れて、ごみ庫に行き、鍵を開けた。
夏のごみ庫に臭いは強烈だ。
警官達も思わず、「うっ。」とむせていた。
警官:「ごみ、調べさせてもらいますね。」
といい、ごみ庫に警官全員で入り、ごみ袋を片っ端から開けて中を出し始めた。
あたりに、ごみの臭いが立ち込めました。
当日は、15袋くらいごみ庫にごみ袋がありました。
20分くらいして、
「ありましたー!。」
との声がごみ庫内とごみ庫前に響きました。
見ると、赤い皮のショルダーつきのハンドバッグを警官が持っていました。
ほんまに捨ててあるーーーーーー!
なんでうちの店ーーーーー!
警官:「いつ、捨てたか確認したいので、防犯カメラも見せて下さい。」
そして、警官2人がバックルームで防犯カメラの画像をずっと見て、
バッグをごみ箱に捨てる容疑者を確認し、画像をコピーしました。
容疑者は駐車場に車を停め、ごみ箱に近づき、
白いレジ袋(被害者のバッグが入った)を
強引にごみ箱にねじ込んでいました。
警官:「この男性は、いつ頃からこちらを利用しているのですか?
余罪があるようなのですが、ごみで不審なものを見たこととかありませんか?」
えっ、余罪もあるの?
JJ:「特に思いつかないです。うちでは、おとなしく買い物されてましたから。」
警官:「そうやって穏やかなふりをして女性に近づいていたようなんです。」
えーっーーーーーーー!
JJ:「じゃあ、うちでもお客様を物色してたんでしょうか?」
警官:「その可能性もありますね。急に利用しはじめたんですよね。」
うーーーーーーーー。
警官:「とにかくこの店と駐車場で被害がなくてよかったです。」
2時間ほど、店内を捜索したり、写真を撮ったりして、警察は帰ってゆきました。
まさか、あの紳士的な男性が強盗犯だったとは!
当店クルーの間にも、激震が走りました。
「うちに、あんな紳士的なお客さんが来るのおかしいと思ってました。」
「これまでも、盗んだバッグうちに捨ててたんですかね。」
「私も、襲われたかもしれないんですよね。」
「裏へ停めるの怖いから、車、店の前に置いていいですか?」
と口々に話し、
事件の記事が掲載されている新聞を皆で見ながら、
「本当に、人は外見だけで判断してはいけないよね。」
「私たち、見る目ないねー。まだまだだねー。」
としみじみ語り、1週間くらいはその話をしていました。
そして、少しでも身なりが良いお客さまや一見さんが来店されると
「このお客さん、かっこよすぎ、気を付けて!」
とか
「この人、おとなしすぎ、要注意!」
とか
「急に、毎日来店しだした客、チェック!」
とかのメモを防犯カメラの映像を停止させてストコンに貼るのが
流行してしまいました。
「やっぱ、ガテン系の常連さんが最強!」
って、クルーさんみんな、急に態度変えたけど、いつも
”ガテン系のお客さまばっか!で男くさい”
って文句いってたよね。
とにかく、犯罪巻き込まれる率が多いコンビニでした。
思い返しても、ずっと頑張ってくれていたクルーさんに感謝です。
人を見極めるのって難しいです。