深夜勤の新人 4

朝ラッシュが落ち着いてきた午前9時ころ、

私は昨日までと店内の商品が、違う場所に置かれているのを

多数、発見して愕然としていました。

牛乳石鹸の赤箱やひとくち羊羹を皮切りに、その後もラッシュ時に

お客様から、多数の売り場の異常のクレームを聞き、

店内の棚を一つずつ見て、正常な位置に戻してゆく

気の遠くなる作業をしていました。

何が、

「完璧です。頑張りました。褒めてください!」だよ!

買い物かごを持って、店内をうろついて商品を元に戻している私。

褒めてほしいのはこっちだよ!

お昼のラッシュ時までに、すべてを元にもどさなければいけません。

プライスカードは移動させておらず、なぜか

商品だけが移動していたので、なんとか元に戻せていました。

一体、なぜ商品をあるべき場所に補充できないのか?

まったくわかりませんでした。

マウントレーニアのノンシュガーだけが、

リーチイン売り場の最上段にあるのです。

缶コーヒーの大きさのまま、詰め込んでいるので

ぎちぎちに盛り上がって、

今にも、滑ってきて落ちそうです。

猫用の缶詰がつま缶の隣にありました。

作業用の軍手が、おつまみコーナーに掛かっていました。

2Lのミネラルウォーターが、ワインの隣で側面の成分表示が前面になって入っていました。

ストッキングが雑誌とともにに差してありました。

コンドームがレッドブルの隣に凄十のタブレットとともに置かれていました。

こんな目立つところに!

レッドブルの隣にあったモンエナは、遠くのおいしい牛乳の横に移動していました。

SOYJOYが切れるチーズの隣で冷やされていました。

ワンカップ大関の赤と青が一本ずつ、棚の全面に置かれており、すかすかで

在庫はすべて、となりの鬼ころしの後ろにまとめられていました。

見つけるたびに

「ぎゃー。」

「もう、やめてー。」

と心の中で叫んでいました。

謎が多すぎて、私の思考は停止寸前でした。

商品の位置異常を見つけるたびに、鼓動が早くなりました。

一人の深夜勤に何が起こっているのか?

ドキドキが止まりませんでした。

まだ、自分で気づいていない商品があるかもしれないので、

伝達ノートに書き込み、クルーさんで共有することにしました。

17時に夕夜間のクルーさんが来たので、一度、家に帰り、

本当は、明日の朝からのシフトでしたが、

22時にH本君と会うために、こぐまさんと店に戻りました。

母親の運転する車でやってきたH本君は、バックルームに入ってくるなり、

「こんばんは、オーナー、店長。

 あれ、今日シフト入ってましたっけ?

 今日も頑張ります。

 どうでした?僕の棚作り。」

とテンション高めでした。

いい訳ないだろう!

いや、冷静になれ、JJ。

JJ:「大変だったよ、みんな。大騒ぎだったよ。

   昨日さ、ひとりでなんかあった?」

H本:「いやーありません。絶好調でした。」

ふーん。

JJ:「なんか、いっぱい商品がいつもと違う場所にあってね、

   お客さまが困っていたよ。どうしてかな?」

H本:「えっ、困る?んですか?」

JJ:「はい、困ります。

   プライスカードと違うものが置いてあったら、

   戸惑うよね。」

H本:「そうですか?  

    コンビニで値段とか見ます?」

えっーーーーーーーーーーーーーーーー!

どう言えばいいんだ。

JJ:「買おうとした商品が、自分の思ってた値段と違ってて

   お金足りなかったりしたら、困るじゃない?」

H本:「お金、足りなかったら、買わずに元にもどせばいいじゃないですか。」

そういうことではないんだよね。

うーん。

JJ:「コンビニとかスーパーの商品は、お客さまが

   見やすくて見つけやすい売り場の位置に置かれてるんだから、

   勝手に動かしちゃ駄目だよ。」

H本:「えー、少しぐらい、いつもと違ってても、

    宝さがしみたいで面白いじゃないですかー。」

お前、本気か?

冷静になれ、JJ。

JJ:「あのさー、うちのお客さまってどんな職業の方が多いか、

   どれだけ急いでるか、朝ラッシュ知ってるよね。

   朝、宝さがしする余裕のあるお客さまいると思う?」

H本:「うー、そうですねー、そういわれればー

    いませんねー。

    いや、ひとりぐらいいるかなー。」

それは、誰だよ!

冷静になれ、JJ。

H本:「すごーく考えたんですよー。棚。

    仲間のところへ置いたんだけどなー。」

仲間?

はあ?

JJ:「軍手と黄金いかは仲間なの?」

H本:「はい。袋の上の方に穴があいてます。吊るせる仲間です。」

JJ:「SOYJOYとさけるチーズは仲間なの?」

H本:「SOYJOYのチーズ味をおいてみました。

チーズ仲間だから、一緒に買ってくれるかなと思って。」

JJ:「マウントレーニアは仲間がいっぱいいるのに、

   引き離しちゃ駄目じゃない。」

H本:「ちょっと、旅をさせてみました。

    ブラックコーヒーの隣なんで仲間入りです。」

調子に乗るなよ!

JJ:「モンエナが牛乳の横にあったんだけど。」

H本:「飲むと元気になる仲間です。」

もういいよ。

JJ:「今日はさ、きちんとプライスカードの表示と

   同じ商品を置いてほしいんだけど。」

H本:「コンビニのプライスカードって、

    小さくて見づらいですよねー。

    はっきり言って、字、読めません。」

えっー!

読めないの?

JJ:「視力悪いんだっけ?」

H本:「はい、悪いです。

    両方0.1ありません。

    小さな字読めません。」

えっー!

JJ:「コンタクトとか眼鏡は?」

H本:「コンタクトは昔使ってましたけど、

    ワンデーはお金かかって、生活費を圧迫するのでやめました。

    眼鏡は、布団の中で体の下敷きになって壊れました。

    家では、ガムテープで固定して使ってます。」

見えてなかったのか!

見えずに仕事してたのか!

JJ:「とりあえず、今日は帰っていいから。

   明日、眼鏡作ってきてください。

   そしたら、シフト入れます。」

H本:「えっー、大丈夫ですって。」

JJ:「大丈夫じゃないです。」

H本:「母親、もう寝てるから帰れないんですー。」

えっ、そこ?

遠くないんだから歩いて帰ってください。

こぐまさんとJJは今夜も帰れません。

おはなしは、つづきます。

    

     

こぐま

こぐま夫婦です。夫こぐま:大学卒業後、某家電メーカー20年勤続後、早期退職。某コンビニチェーンのオーナーを経て某自動車メーカー勤務。妻JJ:大学・専門学校卒業後、不動産会社勤務→某家電販売チェーン地域店舗統括マネージャー→コンビニチェーンオーナー→オーガニック加工食品販売会社経営。毎日の出会い、小さな幸せを大切に生きています。

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