JJでございます。
家電を販売している11月初旬のことでした。
入店したお客様から、
「駐車場にある自販機にゴミが捨てられている」
とご指摘を受け、行ってみると
大きなサイズのレジ袋が2袋、自販機のゴミ箱の前に置かれていました。
中を覗くと大量の柿が詰まっており、半分は腐敗して悪臭を放ち始めていました。
良く見ると、噛んだ跡があります。
店舗裏のゴミ置き場まで持ってきて、ビニール手袋をして中の柿を調べてみると、
なんと、すべての柿に一口ずつ齧った跡がありました。
「甘いか、渋いか調べてたんかな。」
後ろから声がして振り向くと、配送部のTさんが立っていました。
「渋かったんやろうなあ、全部。素人やな。」
と言いつつ去ってゆきました。
一体、誰がこんな重い物を家電店の自販機まで運んで捨てたのか?
うちの店に恨みがある人なのかな。
と思いつつ、ゴミ袋に入れて処理をしました。その時、
「ハイ、JJさん。」
ふいに呼び止められて、また振り向くとお客様のヤン様が立っておりました。
「あっ、ヤン様、こんにちは、どうしたんですか?ここ。裏口ですよ。」
と言うと、口に人差し指を当てて、
「しっー、タカヒロいる?」
と小声で話されました。
タカヒロとは、店長の名前です。
ヤン様は近くの大学の交換留学生で、
当市に来て、一人暮らしをする時に、店長が接客したのが
きっかけでなぜか、店長だけを(恐らくは親しみを込めて)
名前で呼び捨てにされるようになりました。
「なんで、僕だけ呼び捨てなんだ?
他のお客様にいつも変な目で見られて嫌なんだけど。」
と店長はいつも不機嫌になっています。
JJ:「店長は今、昼休憩中です。あと、20分くらいで戻ってきますけど。」
ヤン:「ちょうど、よかった。今日 タカヒロと会わない。
JJさん 女子だから、お話しあってきた。」
えっ、私?
JJ:「どうしたんですか?とりあえず、中へ入りましょう。」
と言って正面入り口からヤンさんを連れて入り、
応接コーナーの椅子に座っていただきました。
ヤン:「JJさん、私、被害 あってます。」
被害?えっ、なんか事件?
ヤン:「大家さん 私を監視しています。
部屋を違う人に貸してます。
私は被害あってます。」
???
さっぱりわかりません。
ヤンさんの住居の大家さんは、最寄り駅一帯を所有するM本様です。
当店の上得意様です。
親子代々、広い土地を所有しており、
マンションやアパートを何棟も建てられて
駅前の商店街で不動産経営をしています。
3年ほど前にお孫さんがやっと、
宅建の資格試験に合格されて代替わりしました。
2代目の社長さんが「やっと、引退できる」
と、とても喜んでいらっしゃいました。
ヤン様は、M本様のご本家の敷地内に建てられた、
5棟連なる古い平屋建ての1棟に住んでおりました。
JJ:「あの、よくわからないんですけど、大家さんて、M本様ですよね。
どうして、ヤン様が見張られるんですか?
違う人に貸してるってヤン様、今、住んでますよね。」
ヤン:「はい、大家さん いい人です。
でも、私が昼に学校に行ってる間に違う人が住んでます。」
???
JJ:「ヤンさんが契約しているお部屋を、大家さんは違う人に貸しませんよ。」
ヤン:「昼 違う人に貸して、夜 私に貸してます。」
うーん。わからない。
ヤン様が誰かと一緒に住んでいるということなのか?
ヤン:「証拠 あります。」
と言ってバッグの中から箱を取り出しました。
P社の脱毛除毛器でした。
ヤン:「これ、このまえ、ここでタカヒロから買った。
今日、使おうとしたら刃に毛が付いてる。
誰かが昼 使った証拠。」
えっー。
見せていただくと、確かに刃に毛がびっしり付いています。
うーん。自分が使ったのではないのか?
JJ:「ヤン様、ご自分で使われたということはないのですか?」
ヤン:「使ってない。家ではじめて開けた。それから、これ。」
と言って、チョコレート菓子の箱を出して見せました。
ヤン:「アーモンドチョコレート、2粒 減ってる。
昼 私の部屋いる人が食べた。
布団も、帰ったら濡れてる。」
えっー。
そんなことあるの?
どうしていいかわからず、悩んでいるとヤン様は泣き出してしまわれました。
ヤン:「大家さんのスソもらって 食べたら 大家さん怒った。
私に、復讐する。
私の部屋、違う人に貸して 私を困る 出ていく。」
スソをもらう?
食べた? 復讐?
聞けば聞くほど、謎が深まり、私は大家様のM本様に電話することにしました。
お話は続きます。