JJでございます。
家電製品はお客様にお売りした日から、お客様と繋がります。
サービスが始まったときから、次のステージに移行します。
工事・配送・設置は大切な大切なイベントなのです。
夏でございました。
一人娘である新婦が大学時代の同級生とご結婚されて、新婦のご実家の近くに、
分譲マンションを新婦のご両親がご購入し、そこが新居になる予定でした。
結婚式・披露宴まで、あと2ケ月ほどで、家電を搬入する予定を決めておりました。
JJ:「配送のご希望日はございますか?」
と卓上のカレンダーを母娘に差し出しました。
母親:「式の近くやとバタバタするし、もう、部屋には入れるから
早くもってきてもらったら?お母さんは、この日がいいと思うよ。お盆も明けてるし。」
と8月18日の日曜日を指差していました。
娘:「うーん、そうやね。ちょっと待って。」
と娘は膝の上のバッグから、A5サイズくらいの本を取り出し、その間にはさんでいた
表のようなものを見始めました。
娘:「あんまり、良くないわ、その日。」
母親:「そう?じゃあ、ちょっと待って。」
と言いながら、今度は母親もバッグから小冊子のようなものを取り出し、見始めました。
娘:「21日やったら、ええかな。クロキンやし。」
母親:「あかん、20日から、あたしとあんたは、シチヨウリョウヒツやで。
絶対、あかん。」
娘:「うーん、じゃあ、29日の水曜日かな。
キン キイロイセンシか。まあまあやね。」
解りません。
お二人の単語が理解できません。
JJ:「先程から、お二人が見られているお手元のものは何でしょうか?」
母親:「宿の占い。あたし、娘とおんなじ宿なんよ。リョウハンキカンっていう、
こわーい期間があってな、要注意なんよ。なーんにも、したらあかんの。」
JJ:「何もできないんですか?」
母親:「そう、ひっそりと生活せなあかんねん。」
JJ:「ひっそり?出かけたりできないんですか?」
母親:「そう、したら、良くないことが起こる、事故にあったり、怪我したり。」
JJ:「怖いですね。」
母親:「そう、怖いんよ。買い物いけんから1週間分、買いだめしとくんよ。献立大変なんよ。」
娘:「あたしは、マヤ歴しか信じんけどね。」
JJ:「マヤ暦って何ですか?」
娘:「えー、JJさん、マヤ暦知らんの?メキシコの占いやで。めっちゃ当たる!
怖い程当たる。絶対見た方がいい。あたしの友達、マヤ暦信じんで酷い目に負うたんで。」
JJ:「お嬢様は、メキシコ関係のお仕事とかされてたんですか?」
娘:「いや、行ったこともないよ。でもスゴイ当たるから、これなしでは生きられん。」
うーむ。埒があきません。
JJ:「どうしましょうかね。マヤと宿で良い日、照らし合わせてくださると助かるんですが。」
娘のラミネートでパウチされたマヤ暦の暦と、母親の向こう6ケ月の宿の暦のコピーを
ホッチキスでまとめた小冊子を照らし合わせながら二人が、
「この日は駄目、この日はちょっと駄目、この日は絶対に駄目。」
と延々と話しておりました。
私はお二人の前に座って、わからない単語に、相槌を打っておりました。
その間には、母親が宿のロクガイシュクを教えてあげたにもかかわらず、旅行に行って
足をねんざした近所の方の話や、娘がマヤ暦で良い日を占ってあげたにもかかわらず、
その日にダイエットを始めなかったばかりにどんどん体重が増えてゆき、
恋人に振られた同僚の話とかを聞かせていただだきました。
事前に電話を入れて、お家で決めてきてもらえばよかったとふかーく後悔いたしました。
母親:「ところで、JJさんの宿って何?」
JJ:「いや、わかりません。」
母親:「知っとった方がいいよ。生年月日、教えて。今、調べてあげるから。」
JJ:「いえ、結構です。」
母親:「宿を知ることは自分を知ることなんやで。宿を知ったら人生変わるで。
人間関係が上手く行くんよ。」
JJ:「大丈夫です。人間関係は今のところ、うまくいってますから。」
母親:「自分がそう思ってるだけじゃない?」
ぐっ。
いつ、この暦談義は終わるのか。
1時間程、経ったときに
「おまえら、遅いねん。また、占いぐだぐだやっとるやろ!」
と新婦の父親がお二人の後ろに立っていらっしゃいました。
「もう、アイスコーヒーと冷房で寒なったわ。はよしいや。」
と言いながら、開運暦をクラッチバッグから取り出し、パラパラとめくり、
「9月1日の日曜日、大安、一粒万倍日じゃ。この日にして、はい、決まり。終わり。」
母親と娘は「えー」「あかん」とか言っておりましたが、
「マンションの名義はわしや。わしのえい日に決まっとるやろ。」
の一言でスパーッと決定いたしました。
神降臨。
お父様、ありがとうございます。
丁寧に、大切に搬入・設置いたします。
やっぱり、六曜は最強なのです。